西島と飲み明かした日、アパートへ帰ってから、横になると、すぐ意識が無くなった。その日が休日で良かった。何時間寝ていたのか、覚えていない。目が覚めると、休日は終わっていて、いつものように仕事へ行った。なんだか生まれ変わったような気分で、僕はその日を過ごした。
 それからしばらくは、仕事に明け暮れて、何事もなく日は過ぎて行った。じとじとと雨の降る季節を過ぎて、暑い日が続くようになった。蒸し暑く日の高いうちに、仕事で外を回るのはキツイ。自転車を引きながら、拭いても拭いても汗が流れ落ちて、僕は拭くのも面倒になってきて、そのうち流れるままにした。夕方になると、少し風が出てきて、涼しくなる。僕はこの瞬間が一番好きだ。風を体中に浴びて、自転車を走らせる。最高の瞬間を終えて、僕はゆっくりと街の喧騒を抜けて、派出所へ戻った。道すがら、行きかう沢山の人の群れを見ながら、僕はふと思った。すれ違うだけの人、すれ違いさえしない人、一度会って話をしただけの人、顔は知っているけれど話をしたことのない人、電話でしか話したことのない人。関わり方はいろいろとあるけれど、せめて僕の一生で、深く付き合うことの出来る人を見つけたら、大事にしなければと思った。僕は今まで、こんな風に思った事など一度もなかった。ただ過ぎ去っていく者と過ぎ去っていく僕が居るだけだった。それを誰より望んでいたのは僕だったはずなのに。一体どうしたというんだろうか。僕は自身の変貌ぶりに驚いた。