ハンナの足跡

「突然来て、何だと思ってるだろう、西島。」
「そりゃあ、おっしゃる通りです。…どうしたんですか？」
　ハンナは黙って下を向いていた。
「細かい事は抜きにして、結論だけ先に言う。ハンナは妊娠した。お前の子だ。」
「…え…」
　西島は放心していた。ハンナから目が離せないようだった。
「妊娠って、俺の子って…ハンナ、本当なの？」
　ハンナは西島の方を見て、黙って頷いた。
「本当に、俺の子？」
「お前が疑う気持ちはよく分かるよ。けど、朋子にも確認した。店の客の子だなんてことはあり得ないそうだ。その他の線はハンナの言葉だけだ。ハンナは、お前の子だって確信してる。」
「…そうですか。ハンナは浮気なんてする子じゃないのは僕も分かってます。ただ、突然のことで、俺、正直、びっくりしちゃって。」