ハンナの足跡

 僕は珍しく冴えた頭のまま、ハンナの部屋へ向かうことが出来た。今までは気ばかりが焦って、いつものように冷静に考えることが出来なくなっていたのに。僕も少しは成長できたんだろうか。それとも、ハンナに対する気持ちが小さくなってしまったのか。
「ハンナ、居るんだろ?俺だよ。」
 僕は静まり返った部屋に向かって叫んだ。ハンナは奥からゆっくりと出てきた。
「…お兄ちゃん。」
 少し伏せ目がちになって、怯えていた。僕はハンナの気持ちを感知して、素早くハンナの元へ近付いていった。
「ハンナ、びっくりしちゃったんだろ、子供の事で。大丈夫だよ、俺達が付いてるから。ハンナは一人じゃないよ。」
 僕はハンナを優しく抱きしめて、背中を摩ってやった。
「お兄ちゃん…私、恐かったよ、不安だったよ、お兄ちゃん。」
「ハンナは一人じゃない。一人じゃないよ。」
 ハンナは堰が切れたように泣いた。きっとハンナのことだから、周りに迷惑を掛けまいと我慢して無理していたんだろう。ハンナのそんな細やかな心の動きが理解できるのは僕だけだ。