ハンナの足跡

「ハンナ、妊娠してるの。」
 朋子の言葉に、僕は唖然とした。
「ねえ、聞いてんの?」
「え?あ、ああ。聞いてるよ。」
「あの子、妊娠してるのよ。この間具合が悪かったとき、まさかとは思ってたんだけど、本当に妊娠してるなんてね。素直に喜んであげたいところなんだけど、あの子の立場上、そうもいかないわね。なんだか複雑で困っちゃうわ…」
「…で、誰の子?」
「もちろん西島くんよ。ハンナがそう言うんだから。少なくとも店の客ではないわね。その辺は皆きちんとやってるわよ、あの店では。あたしが生き証人よ。」
「そっか。西島の。ハンナはどうするつもりなんだろうな。」
「産むって、そう言い張ってる。」
「社長には話したのか。」
「まだよ。西島くんにも、まだ言ってない。」
「男でその話を聞くのは俺が最初ってことか。」
「うん。皆、あんたを頼りにしてんのよ。」