ハンナの足跡

 穏やかな一日だった。神崎が居なくなってしまったせいで、僕にとって職場は居心地の良い場所になっていた。後輩は僕を慕ってくれ、紺野さんは相変わらず僕を思いやってくれた。僕はあらゆる面で満たされていた。こんな日々が、ずっと続けばいいのにと、願ったりした。
 朋子から、突然、連絡が入った。
「あ、あんた、今から急いで、あんたに話があるの。」
「どうしたの?何かあったのか。」
「電話で話すようなことじゃないのよ。とにかく、今すぐ行くから。」
「ああ。わかった。」
 朋子の口ぶりのせいで、僕はいろんな事態を想像してしまいそうになった。特に悪い事を連鎖的に想像してしまうのが僕の悪い癖だ。僕はそれを止めたかったので、出来るだけ別の事で気を紛らわせた。ハンナの事を考えすぎてしまわないように。