「まぁ、制服だしな笑。そりゃ気づくわな。えーと、俺の名前は、坂下 睦月。東高校3年!よろしく!」

へぇー、睦月かぁー、1月生まれなのかなぁ…
などと思いつつ、私も自己紹介する。

「えっと、瀬良中学3年の、笠原深月です。」

「可愛い名前だね」

「ありがとうございます。」


こんな会話をしているうちに、お腹の痛みが引いてきた気がする。

「あのー、私もう時間ギリギリなので、行きますね。ありがとうございました、とても助かりました!」

「どうせ、目的地一緒なんだから、送るよ。東高校でしょ?」

「申し訳ないですし、大丈夫です。」
先輩イケメンだし、周りの女子からの視線も痛い。
でも、あまりに固辞しすぎるのもあれなので、送ってもらうことにした。


2人で改札に向かって歩き始める。


「お腹まだ痛い??」

「いえ、だいぶ楽になりました。薬のおかげです!」

「それは、よかった。」

「………………」

「………………」

「「あの!!」」
お互い沈黙に耐えられなくなったのか、ハモってしまった。

「先どうぞ、そんな大したことではないので」

「いや、俺も、大したことじゃないけど……、
何で東高に入ろうと思ったの??」

「んー、制服可愛かったのと、頭もいいのと、かね揃えてるからですかねー」

「ふーん、まぁ確かに通っててもいい学校だとおもうしね。」
文化祭とかも楽しいしね。と付け加える。


そう、私の受験する、瀬良東高校、略して東高は、地域のトップ校。
頭がいいのに、校則が緩く、イベントも多いこの高校は、人気が高い。

ちなみにイケメン揃いでも有名です…。

隣にいる先輩をふと見ると、改めてかっこいいなぁと思う。

黒髪に、切れ長の目、鼻筋がしっかり通っていて、全体的にバランスがいい。

きっとモテるだろうなぁ……

などと考えているうちに、ホームに電車が入ってくる。

「乗ろうか、」

「はい!」

電車に乗り込むと、ラッシュ時とだけあって、結構混んでいる。

「いつもこんな感じですか?」

「うん、基本はね。まぁ3駅だしね。許容範囲かな。」

確かに3駅なら大丈夫かな……。

気づいたら、学校の最寄り駅に到着していた。
学校までは徒歩5分くらい。
さすがに最寄りとなってくると、同じ制服姿が増えてくる。

やっぱり、先輩は目を引くなぁー、オーラかなー。

横を歩いているのが、信じられないと自分でも思う。

私は、黒髪ロングで、目が大きいといわれるけど、全体でいうと、中の上くらい。少し可愛いなぁっていうかんじ。周りの目を引くタイプではないことは確か。

やっぱり、学校でもモテるのか、さっきからいろいろな人に見られる。
先輩は慣れているのか、気にしている様子はない。


「受験会場って、講堂だよね?」

「はい。
そういえば、先輩高3なのに学校あるんですか?」

東高は、毎年東大合格者がでるし、現役で大学行く人も多い。

「うん、ちょっと用事があってね。大学はもう決まってるんだけど。」


そうか、先輩は今高3だから、もうすぐ大学生になっちゃうんだ。学校で会う機会がないと知り、少し悲しい思いをしている自分に驚く。

「そろそろ講堂に着くよ。」

沢山の受験生がいる場所が多分そうだろう。
今更ながら、緊張してきた。心臓がドキドキしているのが自分で分かる。

「じゃあ、俺はこれで、受験がんばってね。応援してるから。…えっと、深月ちゃん?でいいんだよね。」と笑顔で先輩が言った。

「へ?」

いきなりの名前呼びに戸惑ってしまった私は、奇声を上げてしまった。

「ん?今俺、変なこと言った?」

「いえ、ありがとうございます!頑張ります。」

この時の私は、不覚にもドキっとしてしまった。



なぜなら、先発の笑顔がとても素敵だったから。