「おい、そこ、いいかげん教室に入れろよっ」

 そういって、現れたのが、泉井君だった。

「入れない女子だって困ってるだろ、お前らっ」

「え?」

 そういって、私の方を見て、私の腕をつかむと、人の壁をかき分け、教室へと導いてくれた。

「なんだよ、泉井君、王子様かよ~?」

「そうじゃないだろう? からかうなっ」

 そんな冗談を言われつつ、私は、顔がほんのり、ほころんでいたのを覚えてる。

 うれしかったのだ。
 単純に。

 私の存在を知っていてくれたのも、彼が私の王子様かもしれないことも。

 だから、好きになった。

 そのころ、受験生だった私は、高校生になるまではと。
 中学卒業するまでは、この思いを温めておこうとしていた。

 そして、中学の卒業時。

「泉井君、私の彼なんだ」

「え?」

 小学校のころからの友人の、彼であることを知った――。