ざわざわと騒がしい教室に
担任と思われる男性教師が入ってきて、
クラスメイトが続々と廊下に。
入学式の為、体育館に向かうようです。
「ね、雨芽ちゃん。見て、あっち。
かっこいい子がいる」
興奮気味なみのりさんが指を差す方向には
隣のクラスの生徒が並んでいました。
かっこいい人なんて見当たりません。
強いて言うなら…………
「あのマスクの人?」
壁に寄りかかって隣の男の子と
喋っているマスクの人は、
わたし好みの切れ長一重の目をしていて。
ちょっとだけ心が躍りました。
「マスク?ああ、ちがうちがう、
そのマスクの隣の」
「隣かあ。べつに普通な……」
「んなこと言ったらマスクなんて
ほとんど顔わかんねえじゃん」
「そこがいいの。少なくとも目は
かっこいいよ。タイプ」
「へえー意外。薄顔がすきなんだ」
小声で話していると、視線を感じたのか
マスクの人と隣の人がこちらを見ました。
条件反射でスッと目を逸らすわたしと、
目を逸らさず見つめ続けるみのりさん。
みのりさん、目が合ってますよ…?
なにを考えているのかわたしには
到底理解できないみのりさんは、
なんとそのまま2人の男の子のほうに
歩いて行ってしまいました。
「名前なに?メアド教えて」
これは、逆ナンというやつです!
はじめて見ました………。
あわあわおろおろしているわたしと、
「いいよー」と軽く答えて
携帯を手にする男の子たちは、
やはり別の世界の住人のようです。
「あれ?雨芽ちゃん?なにしてんの?」
「へっ……」
「はやくおいでよ。カイくんだって。
このマスクのほう」
そ、そんな言い方をしたら、まるで
わたしが知りたかったみたいです……。
“マスクのほう”なんて失礼だし。
「あの子は?」
マスクじゃないほうの男の子が
みのりさんに訊きました。
みのりさんは携帯をいじりながら
「稲葉雨芽ちゃん。可愛いでしょ」と。
お利口さんなわたしは、空気を読んで
渋々3人の隣に並びました。
「稲葉なにちゃんって言った?いま」
「稲葉雨芽です…」
「すげえ名前。おれ菊池架威」
「はあ。よろしくです」
「うん、よろしくー」
マスクの……じゃなくて、菊池くんは
隣の男の子の肩に腕を回して言いました。
ちらっと見ると、隣の男の子も
こちらをちらっと。
名乗らない気?
「崎山也季」
