タタンタタン・・・

走ってきて、あがっている息を
落ち着かせようと静かに深呼吸をする。


「ま、間に合って良かったね・・・。」


朝の電車は混み混みで
通勤する人達に紛れて窮屈に揺れていた。


「俺のおかげだな!」

歩は額に汗を浮かべ歯を見せてにかっと笑った。



自分のせいで遅れそうだった事を
わかっているのだろうか。


ほんとに歩は・・・
アホだなぁ。



ほんとに・・・。


手首にさっきまで触れていた
歩の手の感触が

まだじんわりと残っていて

思わず顔が綻んだ。


「何にやけてんだよー。」

「別にーなんでもない!」

むすっと顔を膨らせる彼に
きゅんと胸がなる。



混んでいる車内では私達の距離が
いつもよりはるかに小さくて

触れている肩から肩へ
はやまる鼓動を悟られないように


「怒んなって!」

面白おかしく笑って誤魔化した。



歩には、言わない

言えない。

この気持ちがバレたらゲームオーバー。

きっと今みたいに笑い合ってなんか
いられなくなっちゃうんだ。


友達以上恋人未満

私達にぴったりの関係。