青い記憶




「そう?俺単純なやつだけどね。

俺よりさ、大内歩のがよっぽど

理解できないけど」


「歩?歩こそ単純でしょ」

当たり前のように言った言葉に
新藤くんは顔をしかめた。

「え・・・?



幼なじみで、好きなのに

大内のこと全然見てないんだな」


予想もしていなかった言葉。

新藤くんの黒い瞳に吸い込まれそうな
感覚に陥った。

それは乙女チックな感情から来る物じゃなくて、恐怖心に似たような感情からだった。


私が?

歩の事見てない?


「そ・・・それってどう・・・」


ガラッ

「おぉ!!涼!おはよーん!」

「おー、おはよー」

新藤くんの友達の明るい挨拶によって
私達の会話が途切れてしまった。

いつの間にか10分ほどたっていたようで
生徒が次々に登校してきていた。


溢れかえっていく教室のせいで
新藤くんが何であんな事を言ったのか
知る事ができなかった。



『大内のこと全然見てないんだな』


こんなにずっと一緒にいるのに
私の知らない歩がいるって事?

新藤くんなんて
まだ歩を1度しか見たこと無いくせに
何でそんな事言われなきゃなんないのさ。



歩の事なんでも知った気でいた。

新藤くんには見えて私には見えてなかった
ものってなに?


自問自答しても
答えが出てくるわけもなく

もやもやしたまま1日が過ぎていった。