青い記憶



歩の席に目を向けて

入院がどれくらい続くのかと
不安になってきたのを感じる。


私はどちらかというと人見知りな方だから
友達ができるのには時間がかかる。

そういう面で
歩に頼ってきたところがあるのだ。



「歩・・・一人にしないでよね」

椅子の引きずる音がしないように
そっと椅子を引いて

歩の席に座る。



昨日の事を思い返して


学校で歩と話すより

病院で話したほうが
2人きりで話せたりするかもなぁ


なんて、アホな事を考えて
小さくにやけた。



「俺さー」


「ひゃあ!?」

いきなり聞こえた声に
驚いて肩を大きくびくつかせる。

後ろから聞こえた声に
振り向くと

教室の後ろのドアのところに新藤くんが
いた。



「し、新藤くん・・・?」

もしかして、さっきの聞かれた!?

「俺、分かっちゃった!」


「え?わ、分かっちゃったって何が?」


「上田、大内歩のこと好きだろ」

聞かれたのか、聞かれなかったのか
分からないけれど

悟られたくないところを、悟られそうだ。

朝っぱらから
さ、最悪だ。

「な、なんで、そう・・・」

「そうじゃなかったら
なんで大内の席座ってんだよ」


焦る私に新藤くんはじりじりと歩みよってきた。

「こ、これはあれだよ!
歩の机にらくがきがあったから
消してあげようって思って・・・!」

我ながら
瞬間的に思いついた嘘のわりに
上出来な嘘だと思った。

「ふぅん。
ま、もし好きだったとしても安心してよ。
俺、誰にも言わないし」

絶対にベラベラ話すでしょ!

いつの間にか見上げる距離にまで
来ていた新藤くんの顔は

笑っていない笑顔だった。

確信。この人ドSだ。