******
ゆっくり目を開けると、そこには整った顔があり「おはよう」と優しく笑いかけてくれた。
そう、私はいつの間にか眠っていたのだ。
「ごめんなさい、私・・・・・・」
起き上がりながら、言葉にならない声を出すと、先生はフフッと笑い、
「睦美の方が夜勤明けで疲れているんじゃない?」
なんて言う。
「睦美って・・・・・・」
食事に行った時に、「これから睦美って呼ぶからな」と言っておきながら、いつも「お前」なんて呼ばれていて、心の中では「睦美って呼んで欲しい」なんて思っていたのに、なぜ急に?
「あぁ、睦美がその気になったら呼ぼうと思ってたから」
私の心の言葉が聞こえたかのように答えてくれた彼の表情は照れくさそうで、ボサボサの髪をかき上げて、私から目を逸らした。
「だから、俺のことも先生って呼ぶなよ」
「えっ、そ、それは・・・」
まだ、『瞬さん』とは呼びにくいんですけど・・・。
「はい、呼んでみ」
「そんな風に言われたら、呼びにくいですよ」
見つめられる様子は、まさに『蛇に睨まれた蛙』。
呼ぶまで許さないといった状況は、完全に私にとってアウエーだった。

