「はい、できました」
茶碗は一つしかなかったので、私の分はお椀に入れて、リビングに運んだ。
本当にお米しかなかったので、塩味だけ効かせたお粥。
「ありがとう」
テレビに向けられていた視線をこちらに移すと、ニッコリと笑ってくれた。
笑うと目が細くなるこの笑顔・・・みんなは見たことないんよね。
そう考えると、何だか優越感に浸ることができる。
「お粥しかできなかったんですけど・・・」
先生の前に座りながら言った言葉に「米しかないもんな」と声を出して笑っていた。
「いえ、私が何か買ってきたらよかったんですよ」
実際そうだ。
材料がないのがわかっていたのに買いに行かなかったのだから。
「なに?反省してんの?」
私の表情を見て、覗きこむようにして聞く先生に対して、正直に頷いていた。
「どんなに旨いものを作ってくれても、今はお粥くらいしか食べられないから、気にするな」
そう優しく笑うと、目の前のお粥を食べ始めた。
なんで、そんなに優しいことを言ってくれるの?
嬉しくって涙が出てきそうやん。
出てきそうな涙をお粥をかき込むことでごまかしていた。

