しかし、5分程経っても招き入れてくれる様子がなかったので、ゆっくり部屋の中を覗いた。
「うわっ・・・・・・」
リビングのテーブルには雑誌や医学書が散在していて、お世辞にもきれいとは言えなかった。
そして、その部屋の中心で慌てて片付けるのは、周りからは『俺様ドクター』と呼ばれている人物。
「ゴホッゴホッ」
時折咳込むのを見かねて、断りもなく部屋に入った。
「私が片付けますよ。だから休んでてください」
と言い、無理矢理ソファに座らせた。
「えっ、悪いし・・・」
申し訳なさそうに言うので、「遠慮しないでください」と笑って見せた。
「ごめん」
病院でもこれくらい、おとなしかったらあんな言われ方しないのになぁ。
と思いながらも、そんなことは絶対に口にはできなかった。
片付けをしながら、ローテーブルを挟んだ距離で先生の顔を見ると、少し青白く感じられた。
「食事は?」
メールで食欲がないと言っていたのを思い出して聞いてみた。
「あんまり食欲がないから・・・」
首を横に振りながら言う先生は、やはり「病人」という印象を受けた。
「少しでも食べないとダメですよ」
片付けの手を一旦止めて、立ちあがりながら言うと、先生の視線も上へ向いた。

