「グリーンフル・・・・・・」
少しさびれた地図を見ていると、すぐに目的の建物が見つかった。
そして、少し登り坂になっている道をしばらく歩くと、薄いグレーの壁のマンションが見えてきた。
とてもおしゃれな建物だった。
建物の右奥にあるエレベーターに乗り込むと、一度深呼吸をして『5』を押した。
静かに5階へ到着したエレベーターが開くと、私はゆっくりと出て、先生の部屋を探した。
「505・・・・・・あった!」
廊下の一番端に505という部屋番号が見えた。
再度、深呼吸をしてインターフォンを押そうとして、手が止まった。
一度出した人差し指を下ろして、かばんの中から鏡を取りだした。
やっばい!髪の毛ボサボサだしだし!
しかも顔も酷いな・・・・・・夜勤明けだから仕方ないか。
とりあえず、メイクと髪を軽く整えて、再びインターフォンを見つめ、押した。
「ピンポ~ン♪」
少し高くて明るい音は響いたが、返事はなかった。
・・・・・・寝ているのかな?
そう思いもう一度押そうとした時、「ガチャッ」という音と共に「はい」と少し不機嫌そうな声が聞こえた。
「あの・・・・・・」
「百井です」と言おうとしたのと同時に「えっ?なんで?」という慌てた声がした。
直後にドタドタと騒がしい音がすると、玄関のドアが開いた。
「お前、なんでここに」
グレーのトレーナーの上下を来た先生は、目を丸くし驚いていた。
いつも整えられている髪もボサボサで、ずっと寝ていたのがうかがえた。
「寄り道?」
「俺の家の方が遠いけど?」
口角を上げて笑う様子は少し意地悪にも見えた。
「・・・・・・」
私が俯いて黙っていると、「寒いから入ったら?」と招き入れられた。
「おじゃまします」
躊躇しながらも開けられた玄関に入ろうと足を踏み入れた瞬間、
「ち、ちょっと待って・・・めちゃくちゃ散らかってるから・・・」
私の前に通せんぼするように立つと、
「ここで待ってて」
と玄関先で待つように言われた。

