「睦美・・・ごめん。俺、お前の気持ちも考えずに・・・勝手にあんなことして・・・」
「私こそ、生意気言ってごめんなさい」
私は、体の向きを変えて、彼の胸に顔をうずめて言った。
彼の匂いが私を落ち着かせる。
「でも、睦美、わかって欲しい」
頭の上からの声は真剣で、私は顔を上げて彼の顔を見つめた。
「どうしても、睦美に会いたかったんや。会わずに1週間も出張に行くのが耐えられなかった」
私も同じやで。
会いたくて、会いたくて、夜中でもここに来たかった。
バスがなかったら、自転車で走って来てもいいと思った。
でも、あなたの少ない休息時間を奪ってはいけないと思って我慢したの。
「うん」
私は頷くと、彼の体に身をあずけた。
「でもさ、睦美に怒られて、アホなことをしたと思った。それと同時に、俺だけが会いたいって思ってたんかな?って不安になった」
「私も会いたかったよ。上野山さんに会うまでは、すっごく嬉しくて、早くここに来ようって思ってたもん」
「よかった。あの時、酷いことを言ってごめん。本当に、出張に行ってる1週間、後悔ばかりしてたんやで。でも、ほんまによかった」
私の頭をなでる手が大きくて、優しい。それが嬉しかった。
「なあ、こんなこと、睦美に言うことじゃないと思うんやけど・・・・・・」
少し苦しそうな表情を見上げると、「座ろうか」とソファへと手を引かれた。
ソファに横に並んで座ると、瞬さんは、自分の膝に肘を付けて、組んだ手を口元に持っていき、ゆっくりと話始めた。

