―――次の日の朝―――
「睦美!これ先生じゃないの?」
朝起きて、1階に下りると、大きな声をあげた母が私を呼んだ。
だいたい予想はつく。
「病院をたらい回し10件の末、83歳女性死亡」
このニュースは、テレビ各局で取り上げられていた。
どのコメンテーターも救急体制のあり方問うていた。
そして、遺族のコメントとして、瞬さんがインタビューを受けていた。
彼は
「このようなことが2度とないように、祖母の死が無駄にならないように、救急体制の改善と救急車の適正使用を求めます」
と強く訴えた。
正直、かっこいいと思った。
それは、顔とかではなく、真剣な眼差しで、自分の意見を述べる姿に惚れなおした。
「睦美、彼は素晴らしい人間やな」
父はそれだけを残して、会社に出掛けた。
初めて会った時、あんなに怒ってたくせに!!
「お母さん、ますます先生のファンになっちゃった~!」
なんて空気の読めない母の発言を無視して、私は朝食を摂った。

