「なぁ、ばあちゃん、ごめんな、俺が助けてやれなくて・・・・・」
申し訳なさそうに頭おw下げると、よしこさんは悲しそうな目をしていた。
「瞬が悪いわけじゃないのよ?みんな精一杯してくれていたわ。
おばあちゃんは、おじいちゃんの所に行けるから幸せよ・・・・・・」
ちゃんと伝えなくてはいけないのに、涙が次から次へと流れてきて言葉にならなかった。
「ありがとう」
彼は、私を抱きしめると、優しく言ってくれた。
そして、そしてよしこさんの言葉は続いた。
「瞬、あなたにお願いがあるの。おばあちゃんみたいなことが2度とないように訴えて欲しいの」
私の声に抱きしめていた腕の力を緩めて、よしこさんの方を向いた。
「訴えるって、裁判ってこと?」
いや、そんなはずはない。
この優しいよしこさんの口調からは裁判で争うことを望んでいるようには見えない。
「裁判じゃなくて・・・・・・みんなに訴えかけて欲しいの。
その訴えかけによって、今まで動かなかった組織を動かして欲しいの。
そして、こんなこと2度と起こらないようにして欲しいの。
立場上、難しいかもしれないけど・・・・・・」
よしこさんの切なる願い・・・・・・私は瞬さんの目をじっと見つめながら言うと、「わかった」とだけ言い、力強く頷いた。
「じゃぁ、おばあちゃん行くね」
「えっ、ばあちゃん?」
「元気でね、瞬、睦美さん」
「はい」
二人で声を合わせて言うと、よしこさんは消えてしまった。
「もう行ってしまった?」
少し残念そうな声で聞く彼の表情は、少しすっきりしているように思えた。
「はい」
静かに答えると、「そっか」と天井を見上げた。
よしこさんに「さようなら」と言ってるように。
私も瞬さんを真似して天井を見上げた。

