不意に煙草の先っぽを灰皿に押し潰した一宮さんは、あたしの元へやってきて、煙草臭い舌をあたしのものと絡め合わせた。




「……っ」




――激しいキスと、繊細に動く彼の長い指の動きに意識しなくとも声が漏れる。


苦しくなって、狂おしいほどに。



そのままベッドに押し倒されそうになったから、慌てて身をかわして立ち上がった。




「シャワー、浴びてくる。今日、すごく汗をかいたから」




断ってお風呂場へと向かおうとするけれど、またすぐに腕を引かれ、

「そんなのいい。……気にしねえから」

ベッドの上に乱暴に寝かせられる。




「――だから、早く」




それは彼の口癖だった。誰も盗りなんかしないのに、急いであたしを求めた。



町外れのこのぼろいラブホテルで、一宮さんはあたし以外に何人のどんな女の子とエッチしたのだろう。


きっと、数えられないくらい。



それでいて大切な、背の低いあの子のことは、こんな汚いところに、乱暴に連れ込んだりはしないのでしょう。