「幸せだよ」
「ふーん。……やっぱり、最低」
「絢子は幸せじゃないの?」
意地悪な質問だ。
彼は体を起こすとポケットから煙草とライターを取り出して、いつものように吸い始めた。
それを眺めながら、ベッドの横の棚にひっそりと置かれている灰皿を取って、一宮さんに手渡す。
ありがとう、と受け取った彼は何度か曇った煙を吐き出した後、煙草の先を灰皿に押し潰した。
そのすぐあと、一宮さんはあたしにキスする。
パターン化したあたしたちのエッチの始まりに、心地よさを覚えてうっかりと言葉をこぼしてしまった。
「幸せだよ」
嘘じゃない。
この瞬間だけは、本当に幸せなの。
「……じゃあ、おれと同じだ」
耳元で嬉しそうに囁いた一宮さんの声を、聞いた。

