――今日は金曜日。
朝日と別れてから、しばらく人気のない路地裏で待っていれば、見慣れた黒い車が停まった。
運転席の窓が開いて、見知った人物が顔を出す。
「迎えに来たよ」
なんで一宮さんが偉そうなんだ。
無言で彼の車に乗り込んで、狭い車内に荷物を放り投げた。
「今日は仕事じゃないの?」
「おー」
「へえ」
珍しくスーツ姿でない一宮さんをしげしげと眺めていれば、ミラー越しに目が合って彼がにへっとだらしない笑みを浮かべる。
「……何よ」
「いやいや」
「……」
「今日が最後だね」
わざとらしいと思った。
いつもは可愛く思える人懐こい笑顔も、冗談のような口調も。

