扉と睨めっこすること早数分。
強い決意を持ってここに来たはずなのに、いざそれを目の当たりにしたら途端にしり込みしてしまうだなんて。

「…せっかくここまで来たんだから。せめてこれを渡すだけでも…」

自分に言い聞かせるように何度も何度も深呼吸を繰り返すと、志保は表情を強ばらせたまま思いきって目の前のインターホンを鳴らした。ピンポーンという音と共に心臓が破れそうなほど暴れ始める。

「…出ない…。やっぱり寝てるのかな…だとしたら帰った方がいいのかも…」

思いきって行動してみたはいいものの、よくよく考えたら具合が悪い人の家にいきなり訪問するだなんて非常識も甚だしい。考えれば考えるほど自分の行動が間違っているんじゃないかと思えて、今すぐに回れ右したい衝動に駆られる。

ガタガタンッ____ガチャッ!

「あ…!」

本当に帰ろうかと考えていたまさにその時、インターホン越しではなく突然目の前の扉が開いた。そこから顔を出した人物は信じられないものを見たかのように驚いている。
それもそのはず。


「___え…し、ほさん…?」


「あ、あのっ、突然押しかけて本当にごめんなさいっ! 迷惑なのは百も承知だったんですけど、さっき具合が悪そうだったのがどうしても気になってしまって…!」

しどろもどろになって話す志保を見る男___隼人の顔は困惑色に染まっている。