いつかあなたに還るまで


自分が言い出しっぺにもかかわらず今度はそれ以上つっこんでやるなとは。瑠璃は瑠璃で幼いながらも何かを感じ取ったのか、しばらく考え込むとやがて真剣な面持ちでコクンと頷いた。

「…おねえちゃん、今は何も聞かないよ。だからがんばってね!!」
「へっ?」
「おいるぅ、そろそろご飯だって先生が呼んでたぞ」
「わっ、もうごはん? やったー! じゃあしほおねえちゃん、またきてね!」

「えっ? …あ、あぁ、うん、また楽しみにしてるからね!」
「うんっ! じゃあバイバイ!」

慌てて手元の道具を片付けると、瑠璃は元気よく手を振りながら廊下へと出て行った。その隣では相変わらず卓也が訳知り顔で得意気に笑っている。
そんな子ども達を最後まで笑顔で見送ると、姿が見えなくなった途端どっと脱力して目の前の机へ突っ伏した。

「もう、たっくんには参った…」

こうした施設で暮らしているということはそれぞれの子どもに事情があるということ。極度の人見知りから驚くほど大人びた子まで、その性格も実に様々だ。
卓也は後者に当てはまるのだが、最近は特にドキッとさせられることを口にするから会う度にたじたじしっぱなしだ。