いつかあなたに還るまで


「いいか、恋わずらいってのはな、好きなやつのことばっかり考えてぼーっとしちまうことなんだ」
「すきなひと…? ぼーっと………あっ!」

何かに思い当たった瑠璃がぱっと志保を見る。

「な、間違いないだろ?」
「う、うん…おねえちゃんこの前も今日もぼーっとしてた! じゃあ…!」
「へぇっ?! ち、違う違うっ! るぅちゃん違うってば!」
「ちがうの? じゃあおねえちゃん好きな人いないの?」

「えっ!!」

期待に胸を膨らませたキランキランの瞳に見つめられて動揺が隠せない。既に確定事項と認識している卓也はそんな大人げない反応にますますニヤリとほくそ笑むばかり。

「しほおねえちゃんすきなひとがいるの?」
「えっ…それは、えっと…」

うまいこと誤魔化せばいいだけなのに、逐一バカ正直に考えてしまうあたりが志保が子ども達に好かれる所以でもあるのだが…当然本人がそんなことに気付くはずもなく。

「まぁまぁ。るぅ、大人ってのはな、イロイロ事情があるんだよ」
「じじょう?」
「そう。だから今はそれ以上はつっこまないでやっとけ」