いつかあなたに還るまで


「それ、絶対ウソだな」
「…え?」

作業を再開しようとしていた手がまたもそこで止まる。

「…たっくん?」

見れば2年生の卓也が物知り顔で2人のいる場所へと近づいて来た。

「俺知ってるぜ。そういうのをほんとは何て言うのか」
「えー、なに? たっくんおしえてっ!!」
「へへん、知りたいか?」
「しりたいしりたいっ!!」

突然何を言っているのやらさっぱりわからないが、そんなこちらのハテナなどお構いなしに子ども達はノリノリだ。

「いいか、女がそうやってぼんやり考えごとをしているときは…」
「しているときは…?」

ゴクリという音がどこからともなく聞こえた気がする。
卓也はニヤリと微笑んでたっぷり時間をおくと…

「『恋わずらい』って言うんだぜ」

ドヤ顔でそう断言した。

「…………へっ?」

「こいわずらい? なにそれ?」
「ちょっ…ちょっとたっくん! いきなり何言ってるの?!」

キョトンとする瑠璃と慌てふためく志保、実に対照的な反応だ。