「……さま、…さま、____志保様っ!」

「えっ?! あっ…!」

ビクッと揺れた手の先からオレンジ色の液体が零れていく。
それがまるでいつか見た光景のようで、志保は金縛りにあったようにそこから目が離せなくなってしまった。

「大丈夫ですかっ?! どこかやけどなどは…!」

そのことを訝しく感じながらも、宮間はすぐさま志保の元へと駆け寄り濡れた手元や足を拭っていく。

「あ…だ、大丈夫よ。もうすっかり冷めているから。ごめんなさい、下にも零してしまって」
「そんなものは拭けばいいのです。本当にお怪我はありませんか?」
「本当に大丈夫。ほんとにごめんなさい」

慌てて自分のポケットからハンカチを取り出すと、それを見るなり再び志保は黙り込んでしまった。ここ数日、彼女は何かとこうして考え込むことが増えた。

「……霧島様のことですか?」
「…えっ?」

何の前触れもなく出された名前に思わず大きく反応してしまう。それこそが言葉はなくともイエスだと認めているも同然で、そんな自分に呆れたように志保は小さく息を吐き出した。