いつかあなたに還るまで


「彼は…染谷さんは以前からああいうところがあって…。染谷コンツェルンのご子息なんですけど、その、職業や身分に対する意識が人一倍強いというか…」

西園寺ほどではないが、染谷も世界の富豪に名を連ねるほどの大財閥だ。

「あぁ、同等かそれ以上でなければ認めないとかそんなところですか。公務員の私など論外って感じでしたね」

侮辱されたにもかかわらず何故か隼人は面白そうに笑っている。
どこか自嘲めいたそれに、志保が弾かれたように顔を上げた。

「そんなことありませんっ! 普通に考えれば霧島さんだってご立派なお仕事をされてます! それこそ人が尊敬するほどの。…でもたとえどんなお仕事をされていたのだとしても、あんな風に肩書きだけで人を見下す様なことがあってはならないんです」

「…志保さん?」

「仕事に大も小もない。上に立つ人は、下で支える多くの人がいてこそ輝ける。そのことを絶対に忘れてはいけない。私はそう思うんです。でも彼はそういう私の考えとは対極にいて…。家のことを考えれば私は我儘を通せる立場にいないってことはわかってるんですけど、それでもどうしても耐えられなくて…」

「耐えられなくて…?」