「でもさっきはほんとにごめんなさい。染谷さんが霧島さんにつっかかったのは間違いなく私が原因なので…」
「あなたが謝る必要などどこにもないですよ。…今更ですけど、彼は…?」
初対面にもかかわらずあれだけ喧嘩をふっかけてきたのだ。
隼人の疑問は当然のものだろう。
気まずいのが正直なところだが、隠す理由もなければそんな不誠実なことは許されない気がした。
「あの…実は以前祖父にお見合い相手として勧められたことがあって…」
「お見合い?」
「いえっ、実際にしたわけじゃないんです! ただ、何度かこういう場で顔を合わせることがあって、お前ももうすぐ成人するんだしそろそろ考えてみたらどうだって…でも私はっ」
まるで浮気がばれた後のようにしどろもどろだ。
「あぁ、勘違いなされないでください。あなたを責めるようなつもりで聞いたわけではありませんから」
「は、はい…」
穏やかに諭されてほっと体から力が抜けていく。

