「外交、政務…? …へぇ、公務員ということですか」

明らかに見下したような言い方に、それまで俯いていた志保がぱっと顔を上げた。その瞳は明らかに何か言いたそうに強い光を灯している。

「…どうしました? あなたほどのお嬢さんが隣に伴うには幾分不釣り合いだなと思っただけですよ。他意はありません」
「そんな、不釣り合いだなんて…!」
「だってそうでしょう? 日本のみならず世界に誇る西園寺家の孫娘ともあろうあなたが、このような場で一介の公務員と並んでいるなどと…あなたのお祖父様が知ったらどう思われるでしょうね?」
「そんなことっ…!」

隼人を志保に紹介したのは他でもない祖父自身だ。
だがそんな事実を抜きにしても、この男の傲慢な物言いには我慢がならない。
以前からこの男のこういうところが耐えられなかったが、最近は顔を合わせる度にその酷さを増している。

自分に対する嫌味ならいくらでも我慢もできる。
けれど初対面の、しかも彼には何の関係もない隼人を侮辱されるのだけは許せない。

「染谷さん、霧島さんは___、…っ?!」

何かを言いかけた志保の言葉がそこで途切れた。