あれよあれよと載せられていく料理に圧倒されている志保をよそに、隼人は自分の皿によそったローストビーフをパクリと口に放り込んだ。しばらくしてゴクッと飲み込むと、尚も呆気にとられたままの志保の皿に載せられた同じものをフォークで取って差し出した。
「…えっ?」
「すごく美味しいですよ。さぁどうぞ」
「…え。えぇっ?! いえ、自分でできますからっ!」
「いいですよ。せっかく取ったんですから。遠慮なさらずにどうぞ」
「い、いや、遠慮とかそういうことではなくてっ…」
一体全体何が起こってるというの?!
完全にパニック状態の頭で考えても隼人が手を引っ込める気配はない。
「ほら早く。落ちてしまいますよ」
「えっ?」
見れば確かに今にも落ちてしまいそうな角度でなんとか踏みとどまっている。
とはいえこんな場所でこんな食べ方をするなんて…
彼は一体何を考えているのだろうか?
戸惑いの眼差しを向ければ、対照的にニコッと穏やかな笑みが返ってくるだけ。
そしてその目は早く食べろと訴えている。

