いつかあなたに還るまで


「志保さん、せっかくですからおいしいものをいただきましょう」
「えっ…?」

知らず知らず俯いていた顔を上げれば、先程と同じようにどこか面白そうに隼人が微笑んでいる。

「見てください。すごいご馳走の数ですよ。あんなに豪華な食事が並んでるのに、ほとんどの人が見向きもせずに話に夢中になってます。もったいないと思いませんか?」
「…思います」

いきなり何を? と呆気にとられながらも、彼の言っていることは紛れもない事実なだけに素直に頷いてしまっていた。

「今がチャンスですよ。今のうちに好きなものを好きなだけ食べてしまいましょう。彼らがいくら後で後悔しても早い者勝ちです」
「……」
「さぁ、行きましょう」

ぽかーんと口を開けたまま反応できないでいる志保の右手がふっと温かい何かに包まれる。その刺激にハッと我に返れば、いつの間にか自分の右手に大きな手が重なってズンズンその手を引かれていた。

「あ、あのっ…霧島さん?!」