いつかあなたに還るまで


志保がそんなことを考えたのも束の間、スーッと隼人の瞳にいつもの冷たさを帯びた光が戻ってくるのがわかった。その変化していく様が、まるでスローモーションのように志保の脳裏に焼き付けられていく。

その顔は変わらず笑っている。
だが彼の心は笑ってはいない。
さっきほんの一瞬だけ垣間見えたのは幻だったのだろうか…?

「志保さん? どうかなさいましたか?」
「え? …あ、いえ。なんでもありません」
「そうですか? もし何かあれば遠慮なく言ってくださいね。ではそろそろ参りましょうか」
「…はい。よろしくお願いします」

控えめに頭を下げた志保に隼人はニッコリと微笑み返す。
だがその顔はさっき一瞬だけ見えたものとは違う。


『いつもの彼』 が変わらずそこにいるだけだった。