志保はいつもとはどこかちがう祖父の様子に戸惑っていた。これまでは互いにどこか掴めない距離感を常に感じていたのに、今目の前にいる祖父からはそういった空気を感じない。
何故…?
じっと見つめて探りを入れようとしても、さすがは長年生きているだけあって全くその心が読めない。
ただ、祖父には祖父なりの狙いがあって今回の話を持ち出したということだけはわかった。その目的が何なのかは全く予想もつかないけれど…
いつもとはどこか違う祖父も。
今までとは違って少しだけ前向きになっている自分も。
…そして、何かの目的をもって近付いているだろうあの人も。
それぞれに何か意味があることなのかもしれない。
とにかく今は流れに身を任せてみよう。
目の前の祖父を見ながら志保はあらためてそう思ったのだった。

