「わぁ、凄い人ですね…!」
広い館内は既に多くの人で賑わっていた。ガラス越しに広がる涼しげな光景に皆食い入るように見入っていて、スペースを見つけるのもなかなか難しそうだ。
「週末ですからね。時間はありますからゆっくり回りましょう」
「はい」
それからは隼人の言葉通り、人の流れが緩やかになるタイミングを見ては一つずつゆっくりと見て回った。真っ青な水の中を滑らかに泳いでいる魚の群れを見ていると、まるで自分まで泳いでいるような気になってくる。
気持ちよさげに泳いでいるけれど、彼らは本当に幸せなのだろうか?
「本当はもっと広いところで自由に泳ぎたいのかな…」
「え? 何か言いましたか?」
「…いえ、何も。あ、あっちにはマンボウもいるんですね」
志保がぽつりと呟いた言葉は隼人の耳にははっきりとは聞こえなかった。
何でもなかったように首を振ると、志保は隣の水槽へと移動して再び中の様子に見入っていた。隼人はそんな志保の様子をただ黙って見つめていた。

