あまりの緊張ぶりに隼人の口から思わずクスッと笑いが零れた。
「や、やっぱりおかしいですよね。この歳でこんなことで緊張するなんて…」
「いいえ? 男なら逆に嬉しいと思いますよ。可愛らしいです」
サラッと言われた言葉に志保の顔が一瞬で真っ赤に染まる。
こんなことを会って間もない相手に簡単に言ってのけるなんて、やはり彼は相当女性の扱いに慣れているのだろう。
志保は緊張しながらもどこか冷静にそんなこと分析していた。
「志保さんはどこか行きたいところはありますか?」
「い、いえ、特には…」
「では今日は私が決めた場所に行っていいですか?」
「はい。お願いします」
そう言って頭を下げると、ニッコリ隼人も微笑んだ。
「じゃあとりあえず出発しますね」
ハンドルを握ると、隼人は滑らかに車を発進させた。
やっぱり目が笑っていない…
志保は運転する隼人を視界の端に捉えながらそんなことを考えていた。

