「旦那様が霧島様によろしくお伝えするようにと仰ってました。そして志保様を頼みますとも」
志保の後ろにいた宮間がすぐに答えると、隼人は微笑んだ。
「そうですか。ありがとうございます。会長にはまたあらためてご挨拶に伺いますとお伝え下さい。…では志保さん、参りましょうか」
「…はい」
緊張しながら思わず後ろにいる宮間を振り返ると、彼女は力強く頷いてくれた。志保もそんな彼女を見て頷き返すと、隼人の方へと一歩ずつ近付いていった。
笑顔で志保が辿り着くのを待つと、隼人は宮間に頭を下げた。
「では宮間さん、志保さんはお預かりしますので。責任を持ってこちらに送り届けます」
「志保様を宜しくお願い致します。志保様、いってらっしゃいませ」
「いってきます」
深々と頭を下げた宮間にそう告げると、志保は隼人のさりげないエスコートに導かれながら外へと出た。
「私の運転で申し訳ないですが、今日は車で出掛けましょう」
見ると敷地の外に黒い車が停まっていた。
スポーツカーのようなラインのその車は彼の雰囲気によく似合っている。

