階段を下りていくと玄関ホールにすらりとした足が見えてくる。
やがて志保の姿に気付くとその人物はニコッと微笑んだ。

「おはようございます。今日はわざわざ時間を作ってくださってありがとうございます」


あの食事の日から一週間。数日前に週末によかったらどこか一緒に行きませんか? との誘いがあった。前向きな返事をしているのだから断る理由などどこにもない。この日まで緊張と不安の入り交じった日々を送っていたが…
志保は目の前にいる人物をあらためて見上げた。

おそらく180程あるであろう長身にそれに見合った長い足。
眼鏡の奥に見える瞳ははっきりとした二重で、知性を兼ね備えている。紺のスラックスに白いシャツ、その上にジャケットを合わせているシンプルな着こなしがまた彼をより一層引き立てている。

…やはり彼はとても素敵な男性だ。

「おはようございます。こちらこそお誘いいただきありがとうございます。そしてお迎えまでありがとうございました」
「こちらから誘ったんですから当然ですよ。今日はお祖父様は?」
「ここ数日は忙しいみたいで帰っていません」
「そうですか。もしいらっしゃればご挨拶をと思ったのですが…」