志保の体に異変が起こったのは、宮間とそんな話をした夜のことだった。
「…志保? どうしたっ、どこか痛むのか?!」
いつもより少しだけ帰宅が遅くなった隼人は、先に寝室で休んでいる志保を見るなり顔色を変えて駆け寄った。見れば痛みに耐えるようにその身を小さくして横たわり、額には夏でもないのにじわりと汗が滲んでいる。
「志保、大丈夫か?!」
「あ…隼人さん…お帰りなさい…」
「ただいま。…って、今はそんなことより! どうした、お腹が痛いのか? まさか、陣痛が…?」
伸びてきた手を掴んで背中からゆっくりと体を起こすと、志保がふぅーーーっと大きく息を吐き出した。
「…ふぅ。…ん、多分、そうみたいです」
「そうみたいって…すぐに病院に…」
「待ってください。今は間隔が不規則だから、まだ病院に行くのは早いです」
「…こんなに辛そうなのに?」
苦しそうに顔を歪めていた姿に血相を変えたほどだというのに。
「ふふ、こんなのはきっと序の口ですよ。まだまだこうして話してる余裕だってありますし。一応病院にも連絡してみたんですけど、10分間隔くらいになったら来てくださいって言われました」
「…そっか…。はぁ、ダメだな俺は。あれだけ勉強したつもりでも、いざ志保が苦しそうにしてるのを目の当たりにしただけで全部が真っ白になったよ」
「きっと皆そうですよ。私もほんの少しだけ不安になりましたけど、もうすぐ隼人さんとこの子に会えるんだって思っただけで、自分でもびっくりするくらい力が湧いてきましたから。隼人さんがいてくれるだけで、私はこんなに助けてもらってるんです。いつもありがとうございます」
「志保…」

