いつかあなたに還るまで





「別に礼を言われるようなことをした覚えなどない」


翌日、二人揃って昌臣の元へ挨拶に向かうと、開口一番返ってきたのはにべもない一言。これで話は終わりだと言わんばかりの勢いに、慌ててちょっと待ってと引き止めたほどだ。

「お祖父様にとってはそうだとしても、私にとっては違う。お祖父様があの日隼人さんと引き合わせてくれたから、…ううん、そうじゃない。本当の始まりはもっと前だったの。パパとママがいなくなった後、お祖父様が私を諦めないでいてくれたから、今の私がいるんです」

悲しいことだってあったけれど、その全てがあって今の自分がいる。
自分は幸せ者だと胸を張って言えるから。

「お祖父様の孫に生まれることができて本当によかった。本当に、有難うございます」

深々と頭を下げると、昌臣はやれやれと盛大に溜め息を零した。

「まるで儂がもうすぐ死ぬみたいだな」
「…えっ?! ち、ちがっ…そういうつもりじゃ…!」

ガバッと体を起こして慌てふためく志保に、今度はガハハと大きな笑い声を上げる。

「言っておくが儂はまだまだくだばるつもりはないぞ」
「そ、そんなの当然です! お祖父様には長生きしてもらわないと困ります!」
「当然じゃ。腐るには早すぎるし、後進だって育てていかなきゃならんからな」
「…え?」