「過ぎた時間は変えられない。失ったものを取り戻すことも出来ない。けれど、ずっとずっと想い続けることはできる。俺たちが心から愛し合って生まれた命があったということを。…そしてその子が天国でずっと幸せでいることを」
「…っ、は、や、とさっ…」
「志保、幸せになろう。いつか向こうに行ったとき、胸を張って子どもに会える俺たちでいられるように。二人で、笑顔の絶えない家庭を作っていこう。…そして、そしてもし…」
もう一度腹部に触れた手は温かかった。
温かくて柔らかくて、優しくて。
音もなく零れ落ちた涙が、パタリパタリとその手に吸い込まれていく。
「…もしも、もしもいつかここに新たな命が宿るのだとしたら。その時は二人でその命を守っていこう。不安なことは全部吐き出して、一緒に乗り越えていこう。…そして無事に生まれてくれた時は、最初の子の分まで大事に育てていこう。…いつか、いつか皆が再会できる、その日まで」
「…っ、はやっ、さっ……うっ……うわああああああっ…!」
これまで自分の中だけにしまい込んでいたものが一瞬にして溢れ出す。
決して、決して誰にも見せることのなかった、深い哀しみが。
わぁっと大声を出すと、志保は崩れ落ちるようにして隼人の腕の中へと飛び込んだ。

