徐々に深くなっていくキスに呼吸も荒くなる。それでも離れたくなくて、離したくなくて、必死に大きな背中にしがみついた。

「はっ…」

ようやく解放されたときには肩が揺れるほどに息が上がっていて。
くたっと目の前の胸にもたれ掛かったのと同時にふわりと体が浮き上がった。
成人女性を抱えているのが嘘のような涼しい顔をした隼人が向かう先が寝室だと気付いても、志保は抵抗することはなかった。
したいとも思わなかった。

あれから志保が行きたいと願った場所。
それは他でもない隼人の部屋。
彼を一番感じられる場所で、彼だけを感じて一緒にいたかった。

そんな志保をゆっくりとベッドに下ろすと、隼人は寝室の棚から何かを手に取り正面へと戻って来る。そうしてスッと膝をつくと、じっと自分を見つめる志保の両手をとった。


「…志保。あらためて言うよ。…俺と結婚して欲しい」


一瞬目を瞠ったが、答えなど最初から決まっている。

「はい。私も、あなたとずっと生きていきたいです」

ほんのりはにかみながらも力強く返ってきた答えに、隼人も本当に嬉しそうに顔を綻ばせる。

「…これを」
「え…?」

隼人の右手から現れたのはキラキラと輝くプラチナリング。細かくカットされたダイヤモンドがぎっしりと、だが上品に並ぶそれは、誰の目にもわかる婚約指輪だった。
声を出す暇も無く差し込まれたそれは、全く抵抗することなくするすると志保の指へと吸い込まれていく。そうしてピタリと根元まで辿り着くと、隼人は驚いて震えることしかできないその手をもう一度握りしめた。
慈しむように、包み込むように。