尚も現状が理解できずに怯えている志保の前に、その影がゆっくりと近づいてくる。
どうしたらいい、どうすればいい。
必死で考えようとするけれど、全てが無駄な努力に終わってしまう。
そうこうしているうちに一メートルもないほどの距離で立ち止まったその人物は、振り返った瞬間から一度も離すことなく志保を見つめたまま、ゆっくりとその口を開いた。
「…西園寺志保さん。あなたに伝えたいことがあります。聞いてくださいますか?」
「……」
どうして…?
そう言いたいのに、カラカラに渇いた喉はぴったりと貼り付いて全くその機能を果たしてはくれない。
これは、幻…?
ずっと忘れることができなかった自分の浅ましい願望が見せる、都合のいい夢…?
けれどとても真剣な、そして慈しむような眼差しを一心に注いでくるその人は、そんな志保の混乱ごと吹き飛ばす一言を口にした。
「私、霧島隼人はあなたを心の底から愛しています。…どうか私と、結婚してくださいませんか」

