いつかあなたに還るまで


「わぁ、ここもすごい桜ね…!」

控え室を出て待ち合わせの場所へと向かう途中、渡り廊下から見える日本庭園に目を奪われた。古き良き日本の風情を残すそこにも、今が見頃の桜が満開に咲き誇っている。

「あぁ、これぞ日本だなぁ…」

思わず足を止めてうっとりと見惚れてしまう。外国には外国の良さがあるけれど、こうして四季に触れると、やっぱり自分の生まれた国が一番なのだと実感する。それは一度離れたからこそ気付けたことでもあって。

「この中庭を見るためにわざわざここのホテルに来る方もいらっしゃるみたいですからね。今年は例年より桜の開花も遅めでしたし、まるで今日にあわせたかのようなタイミングで縁起がいいですね」
「…そうだといいのだけど」

一体どんな男性が来るのだろう。
受け身になるつもりは毛頭ないし、見た目や年齢は気にならないけれど、やはり人として尊敬できる人であってほしいというのが本音で。
…緊張しないと言ったら嘘になる。


「…あ。すみません、控え室にちょっと忘れ物をしてしまったので取りに戻ってもいいですか?」
「もちろん。私はここでゆっくり庭を眺めてるから」
「わかりました。すぐに戻って来ますから!」

慌ただしく今来た道を戻る宮間の姿にふふっと笑ってしまう。彼女があんなに慌てる姿を見せるなんて、かなり貴重なこと。

その後ろ姿が見えなくなった途端、あまりに美しい景色の誘惑にむずむず我慢ができなくなり、志保は渡り廊下の脇から中庭へと下りてみることにした。