「まさか振り袖を着るなんて…」
鏡に映る別人のような自分を前にぽつりと呟いた一言に、帯を整えていた宮間がひょこっと後ろから顔を出した。
「お見合いと言えば振り袖が定番じゃないですか」
「そう…かもしれないけど、今まではそんなことなかったでしょう?」
「それは確かにそうですけど、今回は志保様が初めて前向きに迎える日ですからね。もしかしたら本当にご結婚へ…なんてこともありますし、振り袖を着られる機会も限られてるんですから。…ほら、とってもよくお似合いですよ!」
完成とばかりにぽんっと腰の辺りを軽く叩かれて、あらためて今日の自分の装いを見つめた。淡い桜色に色とりどりの花を散らした着物は、まるでこの日のためにあつらえたかのように季節感がばっちりだ。最初はピンクなんて…と思ったけれど、不思議と自分の顔には合っている気がする。
「志保様はお肌が透き通るほどに白いですから。こういう色がぴったりですね」
「そう…かしら?」
「はい。さぁ、せっかくの素敵なお召し物なんですから、今日はいつも以上に胸を張ってくださいね!」
「…やっぱり母親みたいだわ」
「せめて姉と呼んでくださいと言ったはずですが?」
じろりと鋭い視線が突き刺さって、どちらからともなくプッと吹き出した。
これまでもお互いがお互いにとって一番近い存在だったけれど、五年前よりもずっとずっとその距離が縮まっているのを感じる。
まるで、本当の姉妹のように。
「もうすぐ時間ですね。会長は先にお部屋に行かれるみたいですし、そろそろ行きましょうか」

