「そんな私でしたから、当然志保様との間には常に見えない距離を保っていました。表面上は悟られないように、けれど決して踏み込まず、踏み込ませず。…そうしていたのに、流れる月日と共に必死に自分を守ろうとしていた壁が崩れていくのを感じました」
志保は一線引かれていることに気付いていたはずだった。
それでも、屈託のない笑顔で本当の姉のように宮間を慕い続けた。そんな彼女の笑顔に、頑なだった宮間の心が少しずつ開かれていったのだ。
「そんな矢先、私を病が襲ったんです。…再生不良性貧血というもので、骨髄移植が必要なほど重度な状態でした」
「えっ…」
「不思議ですよね。何のために生きているかもわからなくて、特別生に執着していたわけでもないくせに、いざ死というのもが目の前に迫ってきた途端、心の底から恐ろしくなったんです。…そして同時に悟りました。あぁ、私はこのまま一人死んでいくんだなと」
そうして人生を諦めようとしていた宮間に思いがけない出来事が起きる。
どこからかその話を聞きつけた志保が、自分がドナーになれないかと言い出したのだ。
「血縁者でもなかなか厳しいのが現実です。ましてや赤の他人ともなればその確率は何万分の一から何百万分の一まで膨れ上がる。当然のようにリスクだってある。そんなことに彼女を巻き込むわけにはいかないと、私はその申し出を断りました」
だがいつもニコニコ笑っていた志保が、その時だけは明確な怒りを露わにした。
『 やる前からどうして諦めるの?! 宮間は生きたくないの? 少しでも生きたいと思っているなら、例え何億分の一の可能性しかなくたって、僅かでも可能性があるのなら諦めたりしないで! 生きられるのは当たり前のことなんかじゃない。やらずに後悔するくらいなら、私はやった上で後悔する方がよっぽどましだわ! 私は宮間に生きていてほしい。そのために自分にできることがあるならどんなことだってやる!! 』

