「……霧島様、申し訳ありません」
「……え?」
ぼんやりと力なく顔を上げた直後、パシッと乾いた音が響く。
何が起こったのか理解できず目を瞬かせると、目の前で宮間がテーブルから身を乗り出していた。それを見て初めて彼女の右手が自分の頬を打ったのだと気付く。
驚きで言葉もなく呆然とする隼人に、宮間はふぅっと大きく息を吐き出すと再び腰を下ろした。
「…すみません。志保様はこんなこと望んでもいませんし、私にはこんなことをする資格などないこともわかっています。…ですが彼女の腹心として、時に親として姉として見続けてきた者として、どうしても志保様の痛みをあなたにも知って欲しかった」
ズキンと痛んだのは頬ではなく心だ。
「あなたにはあなたの事情があったこともわかっています。ですが傷を癒すことはできなくとも、志保様の心に寄り添うことができた人物がいるのだとしたら、それはこの世にあなたしか存在しなかった。結果として、志保様はたった一人で悲しみを乗り越えなければならなかった」
…胸が苦しい。
「すみません。責めているつもりじゃないんです。ただ、事実として知っていてほしかったんです。志保様は生涯話すつもりはないのでしょう。ですがあなただけは知るべきだと、その権利があると思ったのです」
「…わかっています」
もはやどんな言葉も見つからなかった。
己の過ちが、ここまでの悲劇を生んでいただなんて。
何も知らず、直接謝りたいだなんて。一体どこまで愚かだったというのか。
彼女の痛みの欠片ほども知らずに。
「……志保様は私自身でもあるんです」
「…え?」

