膝の上で拳を握りしめると、隼人はゆっくりと頭を下げた。
「……申し訳ありませんでした」
「……」
膝に頭がつきそうなほど腰を折る隼人を、宮間はただ黙って見つめている。
「既にお気づきでしょうが、私は自分の野望を満たすためだけに志保さんに近づきました。結果何の罪もない彼女を深く傷つけ、本当に大切なものに気付いた時には…私も全てを失っていました。…今さら合わせる顔などないことも、そんな資格がないことも重々承知しています。…ですが一度だけ、一度だけ彼女に直接謝罪する機会をいただけないでしょうか?」
頭を下げたまま必死に懇願する声は、微かに震えていた。
「否」と言われることを覚悟しながらも、残されたほんの僅かな可能性に隼人はギュッと歯を食いしばる。
「志保様は……ここにはおられません」
「……え?」
真意を測りかねる答えにぱっと顔を上げる。
ここには、いない…?
「 もう日本にはいないんです 」

