「今の話を聞いてたのなら違うのよ! あれは私のことじゃなくて友達の…!」
「…………触るな」
地を這うような恐ろしい声に、しがみついていた里香子の体がビクッと揺れる。
そうしてゆっくりと、まるでスローモーションのように振り返った男を見るなり、サッとその顔が色を失った。
滲んでいるのはまるで人を殺せるのではないかと思えるほどの憎悪。
失望。絶望。虚無感。
…そして自己嫌悪。
虚ろな瞳に映る怯えた自分に、里香子は続く言葉を出せなかった。
「自分の命が大事なら、二度とその汚いツラを見せるな」
「_____っ」
絶句するその姿ですら殺意が湧いてくる。
僅かでも、髪の毛一本ですらこの視界に入れることは耐えられない。
絡みつく体を思いっきり突き飛ばすと、もうそれ以上何一つ口にすることはないままその場を後にする。
「待ってっ! 隼人っ! はやとぉーーーーーーーっ!!!!」
悲鳴のような絶叫ももうこの耳には届かない。
もう、何一つ。

