「あの時の顔ったら今思い出しても爽快だったわ~。人って絶望したときにこんな顔するのねって笑いを堪えるのに必死だったんだから。でも自業自得よね。この私をコケにして、生まれた家以外には何の取り柄もない小娘なんかにほだされたんだから。あの女も顔面蒼白になって面白いったらなかったわ。いい気味よね、あはははっ!」
…悪魔がいる。
ここにいるのは人間なんかじゃない。
人の顔をした ____ 悪魔だ。
猛烈に湧き上がってくる嘔吐感に口を抑えて必死に耐える。
「そんな、ひどい…」
「どっちがよ? 元はと言えばあの男が悪いんでしょう? 傷つけられたのは私の方よ!」
「…赤ちゃんは…? さっき言ってたのは…」
「え? あぁ、簡単なことよ。もうすぐ子どもはダメになったって言うのよ。どうせ隼人は詳しいことまで踏み込んではこれないんだから。嘘だなんてばれっこないわ。そうして子どもを失って身も心もボロボロになった私からはますます離れることはできなくなるの。だってあの人の子どもだったんだから。だからあんたにはあと少し協力してもらわなきゃ困るのよ」
軽い口調には似つかわしくないあまりにも重すぎる内容に、もはやその女性は絶句して何も返すこともできなくなってしまった。
「だいたい子どもなんて冗談じゃないわよ。ギャーギャーうるさいし自由は奪われるし。何よりも出産してこのスタイルが多少でも崩れるなんてごめんだわ。私は母親なんかよりも一生女でいた____」
ベラベラと、上機嫌で喋り続けていた里香子の言葉がぷつりと途切れた。
「なっ…?! なんで…!」
そして瞬く間にその目が驚愕に見開かれていく。

