「私知ってました。隼人さんが私に近づいたのは西園寺の家が目的だったって」
「…え…？」
だがぴしゃりと突き放すように告げられたその一言にぎくりとする。
「……志保…？」
恐る恐る顔を上げれば、これまでただの一度も見たことのない冷たい空気を纏わせた志保が、じっと射貫くようにこちらを見ていた。
「私のことなんか好きじゃない。何かしらの野望があって利用されてたってことくらい、こんな私にだってわかります」
「…っ」
ひゅっと異質な音を響かせた喉に、志保は表情一つ変えない。
まるで機械仕掛けのようなその姿に、もっと言えば少し前までの自分を見ているかのような錯覚に、凍り付いたように動けなくなった。
「でも今さらそんなことはどうでもいいんです。隼人さんに対して文句が言いたいわけでもありません。だっていい加減な気持ちで向き合ってたのは私も同じなんですから。……だから」
一度伏せられた瞳がゆっくりと持ち上がる。
この後、彼女の口から恐ろしい言葉が出てしまう。
身勝手だとわかっていても、決して聞きたくなどない、その言葉が。
だがそれを止める術が…自分にはない。
「こんな不毛な関係は今日で終わりにして、これからはお互いの本当の幸せのために生きていきましょう。私達はその条件を満たせる相手ではなかったんです」
